アクセンチュア最新調査――時代のニーズに合わない教育や企業研修が、人工知能(AI)などの先端技術がもたらす11兆5,000億ドルの経済成長を阻む恐れがあることが判明

2018/11/21

経験学習、個別教育、AI弱者支援への投資が、スキルギャップを埋める鍵

【ニューヨーク発:2018年9月19日】

アクセンチュア(NYSE:ACN)の最新調査によると、デジタル技術によってもたらされるべき経済成長が、時代のニーズに合わない教育や企業研修システムによって達成できない恐れがあることが明らかになりました。

G20のうち14カ国では、人工知能(AI)やアナリティクスなどの先端技術への投資により、今後10年間で合わせて11兆5,000億ドルのGDP成長が見込まれます。しかし、これらの国々の企業や教育機関などが新しい学習アプローチを積極的に取り入れない限り、求められるスキルとのギャップを埋めることは難しく、経済成長の可能性を逸してしまう恐れがあることが判明しました。

危機にさらされている2018~2028年のGDP累積成長

求められるスキルに対応できなければ、新技術がもたらす経済成長も限定的に

アクセンチュアがG20若手起業家連盟(G20 YEA)と共同で作成し、発表した調査レポート「求められる教育の変革(It’s Learning. Just Not As We Know It)」には、企業が将来の労働力を把握し、スキル習得の戦略策定に役立つ画期的な分析が含まれています。本レポートは、先端技術によって職務や役割がどのように変化するかを明らかにした上で、新たな職務や役割の実行に求められる新しいスキルを特定しています。さらに、これらの新しいスキルを効果的に習得するには、教育や企業研修を3つのアプローチで変革することが必要であると指摘しています。

本レポートによると、労働時間の51%(対象14か国平均)および54%(日本単独)は、先端技術による高度化の余地があることが分かりました。また、労働時間の38%(14か国平均)および36%(日本)に自動化の可能性があるものの、その影響は職務内容や地域によってさまざまで、高度化機会を増やし、リスクを管理するためのターゲットを絞った施策の実行が必要になります。

例えば、米国の場合、最も多い職種が看護師などのケア&サポート関連の職種であり、先端技術の導入による生産性を最も高める余地がある分野です。この職種では労働時間の64%(14か国平均)および66%(日本)が高度化できる可能性があり、10年以内にこのうち14%(14か国平均)および22%(日本)の高度化が達成される可能性があることが分かりました。これらの職種では、今後10年間で140万人もの増員が必要になると見られており、この需要に対応するには、先端技術を活用するためのスキル習得に向けた適切な投資が不可欠です。

アクセンチュアのシニア・マネジング・ディレクターで人材・組織管理のグローバル統括であるエバ=セージ・ギャビン(Eva-Sage Gavin)は次のように述べています。「新しいテクノロジーが人の仕事を助けるか、自動化するかに関わらず、労働者のスキル向上は最も緊急性の高い優先事項です。経営者に求められることは、研修内容の改善に取り掛かる前に、自分たちの業界がテクノロジーによってどのように変わるのか、またその変化に対応するためにはどのような新しいスキルを従業員に習得させる必要があるのかを、事前に正しく理解しておくことです。」

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 人材・組織管理 マネジング・ディレクターの宇佐美 潤祐は、「日本におけるリスキルの重要性は殊の外大きいと言えます。人工知能(AI)などの先端技術を活用できる人材を効果的かつ効率的に育成できなければ、10年間で5,440億ドルの日本の経済成長が危機にさらされ、GDPに毎年1.6ポイントのマイナス効果を与えるという調査結果が出ています。この数値は調査対象14か国の中で、中国、インド、米国、ブラジルに次ぐ5位の規模となっていますが、逆に言えばAIの活用余地が大きいことを意味しており、経営のトップアジェンダとして位置付けて、取り組みを進めることが重要です」と述べています。

新しいスキルセットの重要性の高まり

本レポートによると、ほぼすべての職種で、高度な論理的思考、創造性、社会的知性、センシング力といったスキルの重要性が高まりつつあります。先端技術の導入によって、これらの動向にさらに拍車がかかることになります。

重要性が高まりつつあるスキルセット

各職種で重要性が高まるスキルセットは、いずれも座学ではなく、実践や経験を通して習得されるものです。

重要性が高まりつつあるスキルセット

出典: 米国労働省のOccupational Information Network(O*NET)のデータをアクセンチュアが分析。

各職種で重要性の高まりつつあるスキルセットは、いずれも実践や経験を通して習得される

アクセンチュア・リサーチのプリンシパル・ディレクターであるアルメン・オーバンソッフ(Armen Ovanessoff)は「現在の学習アプローチは時代のニーズに沿っておらず、ましてや、将来にわたって使い続けられるものではありません。脳科学や行動科学の見地からも、より有効な学習法があることは明らかです。未来の職場で必要となる重要なスキルの多くは、実践や実地経験を通して習得するのが最も効果的です。企業のリーダーや教育機関は、直ちにスキル習得に向けたアプローチの抜本的な見直しを行ない、経験に基づく学習を中心に据えることが重要です」と述べています。

アクセンチュアでは、求められるスキルとのギャップ解消に向けて次の3つのアプローチを推奨しています。

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 人材・組織管理 マネジング・ディレクターの植野 蘭子は、「日本企業は、元々現場でのOJTに根差した経験学習や、幅広いスキルセットを持った人材の育成に長けており、リスキルの土壌はあると言えます。したがって、AI時代において求められる新たなスキルセットを明確に定義することが出来れば、むしろ、今後の日本企業の優位性の源泉になる可能性があると考えます」と述べています。

詳しい分析結果についてはこちら(英語のみ)をご覧ください。

また、Twitterでも情報を発信しています:#FutureWorkforce #G20YEA(英語のみ)

調査方法

アクセンチュアはスキル、能力、業務活動に関する統計的クラスター分析を行い、スキル、タスク、および先端技術による影響に類似性のある10の職務・職種グループを特定しました。これらの10の職務・職種グループ分類を用いて、G20メンバー14カ国の労働人口構成を分類しました。先端技術が特定の業務タスクやスキルのニーズに与える影響について分析し、経済成長への影響を算出しました。さらに、米国労働省のOccupational Information Network(O*NET)と国際労働機関(ILO)のデータを利用して、自動化と強化・増強(オーグメンテーション)の影響を受ける可能性のある労働時間の合計を職種ごとに算出しました。十分なスキル習得がなされなかった場合のGDPへの影響を計測するために、2つの供給仮定の下、GDP成長率(2018~2028年)を予測しました。先端技術への投資に関する2種類のシナリオに基づき、新技術による経済成長を示しています。さらには、複数の業界のビジネスリーダー、専門家、実地労働者を対象に踏み込んだインタビューを実施するとともに、アクセンチュア社内の教育、テクノロジー、人材開発のプロフェッショナルのノウハウと経験も参考にしました。詳しい調査方法についてはこちら(英語のみ)をご参照ください。

G20若手起業家連盟について

G20若手起業家連盟(G20 YEA)は、G20諸国を代表する起業家精神にあふれた組織が集まり、経済再生、雇用創出、イノベーション、社会変革の起爆剤として若者の企業家精神を育むことを目的に結成されました。G20 YEAでは、G20諸国に向けた政策提言と成功事例の共有を通じて、若者の企業家精神の推進を先導するように働きかけています。

アクセンチュアについて

アクセンチュアは「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスとソリューションを提供する世界最大級の総合コンサルティング企業です。世界最大の規模を誇るデリバリーネットワークに裏打ちされた、40を超す業界とあらゆる業務に対応可能な豊富な経験と専門スキルなどの強みを生かし、ビジネスとテクノロジーを融合させて、お客様のハイパフォーマンス実現と、持続可能な価値創出を支援しています。世界120カ国以上のお客様にサービスを提供する45万9,000人の社員が、イノベーションの創出と世界中の人々のより豊かな生活の実現に取り組んでいます。
アクセンチュアの詳細はwww.accenture.comを、
アクセンチュア株式会社の詳細はwww.accenture.com/jpをご覧ください。

【報道関係の方のお問い合わせ先】

アクセンチュア株式会社
マーケティング・コミュニケーション部 広報室
松元 涼子、山田 和美
TEL: 045-330-7157(部門代表)
Email: accenture.jp.media@accenture.com