銀行の経営幹部は、意思決定の際に参照する自行のデータを信頼するも、半数がデータの検証と評価を十分に行っていないことが判明――アクセンチュア調査レポート「バンキング テクノロジービジョン2018」

2018/07/26

アクセンチュア(NYSE: ACN)が毎年発表している、世界のテクノロジートレンドに関する調査レポート「Banking Technology Vision 2018(以下、バンキング テクノロジービジョン2018)」によると、多くの銀行は自行のデータの有効性や信憑性の検証にいまだ十分な投資を行っていないことが明らかになりました。

現在、銀行は常に大量の機密データを保有しており、外部の非構造化ソース(情報源)から追加するデータ量も増大しています。しかしながら、本調査によると、回答した銀行の経営幹部および IT部門責任者の94%(日本では94%)は自行で保有するデータを信頼している一方で、全体の約半数がデータ品質の検証や確認を十分に行っていないことが分かりました。その内訳は、データを信頼しているが、特に検証は行っていない(11%/日本19%)。データの検証を試みてはいるが、品質についてはよく分からない(16%/日本13%)。データの検証は行っているが、品質確保に向けたさらなる取り組みが必要(24%/日本16%)となっています。

また、回答者の84%(日本では97%)が、重要な意思決定の自動化を促進するためにデータを利用する機会が増えていると述べている一方で、回答者の78%(日本では81%)が、これらの自動化によって、データの捏造や部外者によるデータ操作、固有バイアスといった新しいリスクが生み出されていると感じています。

アクセンチュアのシニア マネジング・ディレクターで銀行グループの責任者であるアラン・マッキンタイヤー(Alan McIntyre)は次のように述べています。「活用するデータが信憑性を欠いた未検証のものであった場合、銀行が間違った知見を持ち、偏った判断を下すリスクは高まります。データの履歴をその情報源から全て検証し、データの文脈と使用状況を理解すること、そしてそれら検証データを適切に保護・保守することで、銀行はこのような脆弱性に対処することが可能となります。回答者の5人に4人が、重要なシステムとデータ戦略をビジネスの基盤と捉えていることを考えると、銀行にとってデータの検証・評価は早急に取り組むべき極めて重要な課題の1つと言えるでしょう。」

アクセンチュアの年次調査レポート「バンキング テクノロジービジョン2018」は、25人以上の有識者で構成される諮問委員会による分析、テクノロジー分野の有識者や業界の専門家へのインタビュー、および約800人の銀行の経営幹部および IT部門責任者を対象とした調査結果に基づいて作成されています。なお、この中には、31名の邦銀の経営層およびIT部門責任者が含まれています。

「Building the Future-Ready Bank(将来を見据えた銀行の確立)」をテーマに掲げる今年のレポートは、銀行における創造的破壊の次の波となる5つのITトレンドと、技術変革によって今後10年間に起こりうる、銀行業務のルールの変化について紹介しています。

トレンド1: AIを「市民」に(Citizen AI)

AIは、バックオフィスのみならず、フロントオフィスで行員の一人としての活用へと拡大しつつあります。顧客の信頼と信用を得られることをAIに期待する最大のメリットとして挙げており、透明性が重要な鍵となることは間違いありません。

トレンド2: 拡張現実(Extended Reality)

先進的な銀行では、顧客や従業員との物理的な距離を縮め、彼らとより密接に関わるために、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の利用を開始しています。

トレンド3: データの信憑性(Data Veracity)

銀行のエコシステム全体でデータを統合するにあたり、データ品質が低いと余計なコストが発生します。

トレンド4: 摩擦ゼロ・ビジネス(Frictionless Business)

多くの回答者が、柔軟性に乏しいレガシーシステムの問題解消に、マイクロサービスとブロックチェーンが役立つと考えています。

トレンド5: インターネット・オブ・シンキング(Internet of Thinking)

銀行が、デジタルと融合した優れた顧客体験を提供したいと考えるなら、適切なテクノロジー基盤への刷新が必要です。

アクセンチュアの金融サービス部門の戦略マネジング・ディレクターであるピーター・サイドボトム(Peter Sidebottom)は次のように述べています。「銀行では、同僚や接客担当者としてのAIの存在感が増しています。それに伴い、AIはどのように重要な判断を下すのかについての詳細な調査が行われるようになるでしょう。AIの意思決定プロセスをブラックボックス化しておくわけにはいきません。AIが法令を遵守し、顧客の信頼を得るには、AIにも他の従業員に対して行っているような『透明性の確保』が求められます。」

本レポートで紹介している別のトレンド「摩擦ゼロ・ビジネス」では、今日の企業の成長はテクノロジーをベースとしたパートナーシップにかかっていることについて取り上げています。しかし実際は、多くの銀行が複雑で柔軟性に乏しい業務/技術プラットフォームを抱えており、外部のパートナーとの連携は決して容易ではありません。レポートでは、銀行がこれらの課題を解消するのに役立つ2つの技術として、「マイクロサービス」と「ブロックチェーン」を紹介しています。

特にブロックチェーンは、銀行業界にとって極めて重要な技術です。より広範な調査レポートである「テクノロジービジョン2018」では、今後3年間で自社にとって重要になる技術にブロックチェーンとスマート・コントラクトを挙げた回答者の割合は、銀行業界が最も高いものでした(他業界の平均が60%であったのに対し、銀行業界は71%)。加えて、銀行の上級役職者は、平均2.6年後には自行内で業務用のブロックチェーン・システムが始動し、将来的には自行の従来の基幹システムはコスト効率に優れたブロックチェーン・システムに置き換わるであろうと考えています。

アクセンチュアの「バンキング テクノロジービジョン2018」の全文はこちらからご覧いただけます。(英語のみ)

調査方法

「バンキング テクノロジービジョン2018」レポートは、アクセンチュア・ラボとアクセンチュア・リサーチが毎年作成している「テクノロジービジョン2018」の情報を基にまとめられています。「テクノロジービジョン2018」の調査では、公的機関や民間企業、研究機関、ベンチャーキャピタル、ベンチャー企業に在籍する25人以上の有識者で構成される「テクノロジービジョン外部諮問委員会」から収集された知見を参考にしています。また、テクノロジービジョンの編纂チームが、テクノロジー分野の有識者や業界の専門家、100人近くのアクセンチュアの経営幹部に対するインタビューも実施しました。同時に、アクセンチュア・リサーチでは、新しいテクノロジーの採用に関する知見を得るために、世界25カ国、18の業界にわたる6,300人以上の上級役職者およびIT担当役員を対象にオンライン調査を行いました。

年次調査レポート「バンキング テクノロジービジョン2018」は、銀行業界の動向についてまとめたもので、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域、アフリカ、南米25カ国の銀行の経営幹部およびIT部門責任者、約800人を対象とした調査結果に基づいて作成されています。今回の調査は、主要な課題と優先的に採用、投資すべきテクノロジーを特定するのに役立てられました。主な回答者は、年商5億ドル以上(大多数の企業は年商60億ドル以上)の企業の上級役職者および部門・部署の責任者です。

本プレスリリースは、2018年4月19日(現地時間)にアクセンチュアのニューヨークより発表した内容を日本語に翻訳したものです。原文のプレスリリースは、以下のURLよりご覧いただけます。(英語のみ)
newsroom.accenture.com/news/bankers-confident-in-integrity-of-data-driving-business-decisions-but-half-arent-doing-enough-to-verify-and-validate-that-data-according-to-accenture-report.htm

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