アクセンチュア最新調査――デジタル技術の活用が化学プラントの収益向上と新規設備投資を促進する要因になることが判明

2018/05/16

一方、”つながる工場”の実現はサイバーセキュリティのリスクを伴うおそれも

アクセンチュア(NYSE:ACN)の最新調査によると、化学プラントの操業におけるデジタル技術の活用はいまだ初期段階にあるものの、業務管理や財務面でのメリットに対する理解が広がる中、導入に向けた取り組み自体は増加傾向にあることが判明しました。

アクセンチュアが、世界12カ国の化学企業の経営幹部360人を対象に実施した「化学プラント操業におけるデジタル技術に関する調査」によると、回答者の80%が、「すでに自社の化学プラントのデジタル化に大規模な投資を行っている」と回答したほか、85%が「今後3年間で全社的なデジタル化に向けた設備投資を増加させる」と予測しています。さらに、「デジタル化によるメリットに満足している」とした回答者は全体の92%に達しており、具体的なメリットとしては「効果的な操業管理」、「製品品質の向上」が上位に挙げられています。

また、圧倒的多数である95%の回答者が「デジタル技術の導入は、目に見える形で収益面での成果につながっている」との見方を示しました。製造工程における営業利益については、31%が「10%から20%改善した」、20%が「20%から40%改善した」と回答するなど、過半数が2ケタの改善を示した点を評価しています。

化学プラント操業におけるデジタル技術に関する調査

多くの化学企業がプラント全体のデジタル化に向けた実証プログラムに着手していますが、デジタル技術の完全な導入は、いまだ一部の現場にとどまっています。クラウド、ロボティクス、人工知能(AI)、モビリティ活用やウェアラブル機器、サイバーセキュリティなど、経営トップがより広範囲な導入を検討しているデジタル技術であっても、それらを実際に幅広く活用していると回答したのは3分の1以下に過ぎません。

回答者の43%は、すでに実施中の実証プログラムとして、アナリティクスを挙げています。アナリティクスは、化学企業が最も多く導入している取り組みであり、膨大なデータから多くのインサイトを導き出すことができるため、46%が「今後3年間のデジタル投資分野のトップ3に入る」との見方を示しました。実際、回答者の51%が今後1年間で最も費用対効果の高い取り組みのひとつになると予測したほか、3分の1がデジタル関連投資予算の2割から4割をアナリティクスに割り当てると回答しています。

アクセンチュア素材・エネルギー本部のグローバルIndustry X.0統括マネジング・ディレクター トレイシー・カントリーマン(Tracey Countryman)は次のように述べています。「私たちがIndustry X.0と定義しているデジタル変革がもたらす可能性について、化学業界の理解はさらに深まっており、企業は自社の主力事業、労働環境、顧客体験、ビジネスモデルなどを変革するため、最先端のデジタル技術を導入しています。デジタル変革により、スマートにつながった設備資産を活用した効率化を進め、新たな収益源を確保することで、組織内に秘められていた価値を引き出すことが可能になります。」

化学業界では “つながる工場化” がさらに進展する一方で、日増しに高まるサイバー攻撃の脅威に対して無防備になっています。「過去1年間に操業中のプラントを狙った不正アクセスの試みが30件以上あった」と回答したのは全体の73%に上ったほか、半数以上(54%)は「30件以上の不正アクセスを防止できなかった」と答えています。また、50%は「不正アクセスを検知するまでに数日から数週間、中には数カ月もかかった」と回答しています。

化学プラント操業におけるデジタル技術に関する調査:不正アクセス

こうした課題に直面している一方、化学企業にはサイバー攻撃の脅威を特定し、それにうまく対処できる能力が著しく欠けているのが状況です。「サイバーセキュリティのインシデントによる経済的リスクを管理し、または損害を最小限に抑えることができる」と回答したのは、過半を下回る42%でした。また、「不正アクセスの原因を特定できる」と回答したのは39%、「不正アクセスを監視できる」と答えたのは33%と、さらに少数にとどまりました。

サイバー攻撃を防ぎきれなかった場合の影響は、計り知れないものがあります。回答者の16%は、プラントにおける最大のセキュリティリスクとして、「業務上の影響」を最上位に挙げています。これには、生産量の低下や顧客に対する供給契約不履行などが含まれ、サイバー攻撃が企業の利益に重大な影響を及ぼす可能性を示しています。2番目に挙げられたリスクは「環境・健康・安全」(15%)で、3番目は「オペレーションの信頼性」(14%)でした。このうち、2番目のリスクは操業中のプラントを狙ったサイバー攻撃が自社の従業員や公共の安全などを脅かす可能性があることを示唆しています。

アクセンチュア素材・エネルギー本部素材産業統括マネジング・ディレクター兼サイバーセキュリティリードを務めるロバート・ボイス(Robert Boyce)は、次のように述べています。「化学企業は、自社プラントの操業にサイバーセキュリティに対する復旧力や対応力を強化するための投資を早急に行うべきです。旧来型の技術を活用したシステムが多く残っているプラントでは、拠点ごとの技術が標準化されていないケースもあることから、セキュリティ管理のレベルに格差が生じ、無防備な状態になっています。サイバー脅威からプラントを保護するためには、より効果的に対応、対処できる敏捷性や適応力が求められています。」

調査方法

アクセンチュアでは化学業界における最高責任者(Cレベル)、トップ・マネジメント層、部門リーダー360人を対象にオンライン調査を実施しました。調査対象は、現在、主力業務でデジタル技術を活用している化学企業で、年間売上高200億ドルから5億ドルまでの企業です。調査は2017年3月中旬から4月中旬に実施し、日本、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、サウジアラビア、シンガポール、スイス、トルコ、アラブ首長国連邦、英国、米国の回答者を含んでいます。

アクセンチュアについて

アクセンチュアは「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスとソリューションを提供する世界最大級の総合コンサルティング企業です。世界最大の規模を誇るデリバリーネットワークに裏打ちされた、40を超す業界とあらゆる業務に対応可能な豊富な経験と専門スキルなどの強みを生かし、ビジネスとテクノロジーを融合させて、お客様のハイパフォーマンス実現と、持続可能な価値創出を支援しています。世界120カ国以上のお客様にサービスを提供する44万2,000人以上の社員が、イノベーションの創出と世界中の人々のより豊かな生活の実現に取り組んでいます。
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