2023/12/04

アクセンチュア最新調査――ネットゼロ達成が見込める企業はわずか18%
停滞を打破するカギは重工業

経済的障壁を打破し、ネットゼロを加速する経済成長へ、求められる業界横断での取り組み

【ニューヨーク発:2023年11月16日】 アクセンチュア(NYSE:ACN)の最新調査によると、2050年までにネットゼロ達成が見込める企業は、わずか18%(日本では15%)であることが明らかになりました。また、現在の経済環境においては、38%の企業は脱炭素化のためのさらなる投資はできないと回答しています。しかし、世界全体のCO2排出量の40%を占めており、エネルギー消費が多く、排出削減が困難な、鉄鋼、金属、鉱業、セメント、化学工業、貨物・物流といった重工業において、その成長を可能にする脱炭素戦略を変革することで、この状況を3年以内に打破できる可能性があります。

アクセンチュアの最新調査レポート「Destination net zero(邦題:2050年ネットゼロ実現に向けて)」は、世界の大手企業2,000社のネットゼロへのコミットメント、脱炭素に向けた活動、排出量のデータを分析しています。加えて、産業界の脱炭素化における当面の課題と優先課題を把握するため、14の業界と16カ国にわたる1,000人以上の経営幹部を対象とした調査に基づいています。

本レポートでは、ネットゼロの達成を目標にする企業は、2022年の34%から37%へ微増しました。その一方で、排出量を開示している企業の49.6%では、2016年以降排出量が増加しています。また、32.5%の企業は排出量を削減できているものの、現在のペースでは、2050年までのネットゼロ達成は難しい状況です。企業レベルでこの問題に対処するため、本レポートでは、脱炭素化に向けて、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーへの転換などの既に確立された手段から、グリーンITの導入、ビジネスモデルの変革、炭素除去といった、より難易度の高い手段まで幅広い手段を提示しています。

アクセンチュアの欧州・アフリカ・中東地区の最高経営責任者(CEO)を務めるジャン=マルク・オラニエ(Jean-Marc Ollagnier)は次のように述べています。「企業によるネットゼロに対するコミットメントが増加したことは喜ばしいことですが、重要な脱炭素施策の採用は一様ではなく、基本的な取り組みを実行できていない企業もあります。 ネットゼロの達成は、企業にとって多くの障壁が存在しますが、事業の成長とネットゼロ対応の方向性を統合し、自身を変革し、バリューチェーンを再構築する機会でもあります。また、需要と供給の分断に対処する必要があるため、これは企業にとどまらず、エコシステム全体のチャレンジでもあります」

また、アクセンチュア株式会社 ビジネス コンサルティング本部 サステナビリティ プラクティス日本統括 マネジング・ディレクターの海老原 城一は、次のように述べています。「日本での調査結果に目を向けると、ネットゼロの達成を目標にする企業は57%に上り、世界平均の37%よりも高い値になっています。その一方で、2050年までにネットゼロ達成が見込める企業は、世界平均の18%よりも低い15%に留まっています。ネットゼロに対する高い意欲を踏まえ、それを実現させるためには、⾃社による直接的な排出量だけでなく、サプライチェーン全体で考える必要があります。Scope3と定義されるサプライチェーン全体での排出量削減に向けて、取引先企業も含むエコシステム全体で計画的かつ具体的なアクションが求められています。アクセンチュアは、これらに取り組む企業と一緒に、脱炭素社会の実現を目指してまいります」

また、アクセンチュアの調査レポート「Powered for Change(邦題:脱炭素社会への転換に向けた原動力)」では、経営者を対象に調査を行い、世界全体でのネットゼロ目標の達成には、重工業の変革が不可欠であることが明らかになりました。重工業は世界最大のCO2排出源であると同時に、パルプ・製紙、航空宇宙・防衛、自動車、産業機器、ライフサイエンス、消費財などの製造業/軽工業と相互依存しています。しかし、脱炭素化の経済性と産業間での構造的な不整合が、この進展を妨げています。

・ 低価格で低炭素なエネルギーへのアクセスと利用可能性の改善が必要
重工業の経営者の81%は、自社の産業を脱炭素化するために必要なゼロカーボン電力を確保するのに20年以上かかると予想しています。一方、エネルギー事業者では自社の事業を脱炭素化することに焦点を当てています。

・ 低炭素製品の商業的な採算性への信頼を強化することが必要
重工業の経営者の95%は、ネットゼロの製品やサービスをCO2消費量の多い代替品と同程度の価格で提供するには、少なくとも20年はかかると予想しています。また、54%の重工業の経営者は、メーカーの調達意向が脱炭素化への投資に十分な信頼をもたらすと回答しています。

・ コスト管理への懸念に対処することが必要
重工業の経営者の40%は、現在の経済状況下で脱炭素化のためのさらなる投資を行う余裕がないと回答しています。また63%の重工業の経営者は、優先的に取り組むべき脱炭素化対策が2030年までには経済的に魅力的なものにならないことを示唆しています。

アクセンチュアで素材・エネルギー業界の成長戦略業務とサステナビリティ・サービスをグローバルで統括する、マネジング・ディレクターのステファニー・ジャミソン(Stephanie Jamison)は次のように述べています。「重工業の迅速かつ経済合理性のある脱炭素化には、バリューチェーン全体での協調行動と、Compressed Transformation(戦略、デジタル、オペレーションを含むすべてを変える全社変革)が必要です。重工業だけが脱炭素化の全コストを負担し、その結果ネットゼロ目標を達成できなければ、全産業での目標達成も困難になるでしょう」

多くの企業が3年周期で経営計画を策定するなか、ネットゼロの達成は3年では不十分です。しかし、経済成長とのトレードオフをなくし、ネットゼロの推進に向けて、この期間に達成すべきことを本レポートは示しています。この基盤を築く上で、今後3年以内に3つの重要なステップを実行し、可能な限り多くの脱炭素化の施策を同時に講じることが必要です。

1. 産業界における脱炭素化の第一段階の資金調達のために、グリーンプレミアムを考慮する
この取り組みを主導すべきは軽工業です。脱炭素化の先行コストを吸収し、どのグリーン製品をターゲットにすべきかを把握することは、将来のコストダウンを実現する鍵となります。実際、重工業の経営幹部の52%は、脱炭素化での優先事項となる上位3つのビジネスケースの改善には、収益の拡大が最優先であると考えています。

2. 低炭素電力と水素の供給をより迅速に拡大し、安価で安全なものにする
太陽光発電とグリーン水素の普及が進めば、2050年までにその均等化コストはそれぞれ77%と74%減少するとアクセンチュアは予測しており、結果としてグリーン産業製品のコストも削減されます。さらに、石油・ガス・電力会社の64%は、産業および物流の顧客が長期的な脱炭素パートナーシップを締結し、好循環を生み出すために協力する意向があると考えています。

3. 低炭素インフラに関連する資本および運用コストの削減を推進する
大部分を重工業の管理のもとコスト削減を実現し、重工業の脱炭素化を推進することが不可欠です。例えば、アクセンチュアの分析では、グリーンスチールには大幅なコスト削減の可能性(2050年までに49%減少)があり、これにより建設費と設備費の削減も期待できます。

前述のジャミソンは次のように述べています。「ネットゼロ達成とビジネス成長の実現には、これらを並行して実行し、直ちに規模を拡大する必要があります。業界や 国を越えて、世界中のステークホルダーが協力して、脱炭素化の経済における新たなフロンティアを創造し、重工業に変革のための強固な基盤を与えるべきでしょう」

調査方法
「Destination net zero」では、アクセンチュアがThe SmartCubeと協力し、脱炭素化に関する基準をもとにG2000のデータを収集しました。今年で3年目となるこの調査では、企業の公開文書(ウェブサイト、年次報告書、サステナビリティ・レポートなど)を分析しています。このアプローチにより、アクセンチュアはG2000の企業が採用している脱炭素化の目標や施策に関する独自のデータベースを構築しました。なお、排出量のデータはS&P Global Market IntelligenceのSustainable1から取得しています。

「Powered for change」では、アクセンチュアが2023年4月から5月にかけて、石油、ガス、電力業界、重工業、軽工業のCレベルまたはCマイナス1レベルの経営幹部1,000人を対象に、グローバル調査を実施しました。この調査では、産業界の脱炭素化に関する短期的な課題と優先事項、スコープ1から3の排出量に対する期待、選択した脱炭素化ソリューションの財務的なビジネスケースを改善するための主要な収益・コスト要因に焦点を当てました。これと並行して、アクセンチュア独自のS字カーブ分析を用いた一連の定性的インタビューと技術経済モデリングを実施し、特定のシナリオにおける脱炭素化へのコスト要因を定量化しました。

アクセンチュアについて
アクセンチュアは、世界有数のプロフェッショナル サービス企業です。アクセンチュアは、世界をリードする企業や、行政機関をはじめとするさまざまな組織の中核にデジタル技術を実装することで、組織運営を最適化し、収益を拡大させ、また市民サービスの向上にも貢献するなど、お客様に対して目に見える成果を圧倒的な規模とスピードで創出しています。 アクセンチュアでは、優れた才能でイノベーションを主導する約733,000人もの社員が120カ国以上のお客様に対してサービスを提供しています。 また、テクノロジーが変革の成否を分ける時代において、世界中のエコシステム・パートナーとの緊密な連携を図りつつ、クラウド、データ、AIおよび業界ごとの比類のなき知見、専門知識や、グローバル規模のデリバリー能力を最適に組み合わせながらお客様の変革を支えています。アクセンチュアは、ストラテジー&コンサルティング、テクノロジー、オペレーションズ、インダストリーX、ソングの領域をまたぐ、幅広いサービス、ソリューションやアセットを活用して成果につなげています。アクセンチュアでは、成功を分かち合う文化や、360度でお客様の価値創造を図ることで、長期にわたる信頼関係を構築しています。またアクセンチュアは、お客様、社員、株主、パートナー企業、社会へ提供している360度での価値創造を、自らの成功の指標としています。
アクセンチュアの詳細はhttp://www.accenture.com/us-enを、
アクセンチュア株式会社の詳細はhttp://www.accenture.com/jp-jaをご覧ください。

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川上 雄一郎
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